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PCBの挿入損失:S21、材料選定とチャネル検証

PCBの挿入損失とは?#

PCBの挿入損失は、配線経路を通過する信号電力の減少をデシベルで表したものです。選択した測定基準面の間にある配線、ビア、コネクター接続部など、評価対象の経路全体に適用されます。3 GHzで突然生じる現象ではなく、インピーダンス不整合だけが原因でもありません。

基準インピーダンスが等しく、整合した2ポート測定では、順方向伝送をS21で表します。ネットワークアナライザーでは一般に20 log10|S21|を表示し、損失のある受動経路では負の値になります。挿入損失を正の損失値として示す場合は符号を反転し、IL = -20 log10|S21|とします。例えばS21が-3 dBなら、挿入損失は約3 dBです。グラフや仕様でどちらの表記を使っているか必ず確認してください。

挿入損失が重要な理由#

伝送路は、必要な周波数範囲で受信器に十分な信号を届ける必要があります。周波数によって減衰が異なると、波形全体が一様に小さくなるのではなく、受信波形の形そのものが変わります。デジタルインターフェースでは、対応するインターフェース要件と受信器の能力に照らして経路を評価してください。クロック周波数だけでは、信号エッジに含まれるすべての周波数成分を表せません。

損失の測定結果を扱う際は、配線長、配線層、測定基準面、両端の位置を記録します。短い材料評価クーポンの数値を、実装済みチャネル全体の結果と同じものとして扱うことはできません。有効な仕様には、周波数範囲、最大許容損失、測定値の表記方法、含める構造を記載します。

PCBの挿入損失を生む要因#

  • 導体損失:銅の有限な導電率と電流分布によってエネルギーが散逸します。銅表面の粗さは高周波の導体損失を増やすことがありますが、平滑な箔を選んでも表皮効果そのものはなくなりません。
  • 誘電損失:絶縁材料がエネルギーを散逸させます。この性質を表すのが誘電正接、Df(損失正接)です。比誘電率Dkは伝搬やインピーダンスに影響しますが、Dfとは異なります。
  • 不整合と不連続部:ビア、パッド、コネクターでの構造変化により、エネルギーが反射して順方向の伝送量が減る場合があります。その影響は形状や周囲のリファレンス構造に依存します。
  • その他の要因:構造や使用条件によっては、放射や漏れも損失に寄与します。

ある周波数を境に不整合の影響が小さくなり、誘電損失が支配的になるという普遍的な境界はありません。寄与の割合は、材料、形状、銅表面粗さ、長さ、接続部で変わります。周波数だけで原因を決めず、実際の層構成と伝送路を比較してください。

挿入損失と反射損失の違い#

S21は順方向伝送、S11は入力側の反射を表します。反射損失は通常-20 log10|S11|で定義されるため、正の反射損失値が大きいほど反射は少なくなります。正の挿入損失値は小さいほど伝送損失が少ないので、望ましい値の方向が逆です。

伝送路の問題を調べる際は、両方の結果を使ってください。伝わった信号が小さいという情報だけでは、どれだけが反射され、どれだけが散逸したのかは分かりません。コネクターはPCB側の接続部と合わせて評価します。パッド寸法、リファレンス面の処理、ビア形状も接続構造の一部です。

実務に役立つ設計・検証手順#

  1. 積層板を選ぶ前に、インターフェース要件、チャネルの両端、損失予算を定義します。
  2. 製造会社に、製作可能な層構成と適切な試験条件での材料データを求めます。Dkが低いという理由だけで選ばず、DkとDfを分けて比較してください。
  3. 重要な経路から不要な配線長や層間接続を除きます。コネクターのフットプリントとビア構造もチャネルモデルに含めて確認します。
  4. 適切なモデルで材料や形状の変更を評価し、その後、同じ測定条件で代表的な実機を比較します。
  5. 試験報告書を受け入れる前に、校正、測定基準面、治具の扱いを合意します。異なるケーブルや接続部を含む測定値を、同じPCBの結果であるかのように比較しないでください。
  6. 承認した材料、形状、合否要件を、版管理された製造文書に記載します。

製造レイヤーの確認にはGerberビューアーをご利用ください。製造上の検査とチャネル性能測定の違いはPCB検査ガイドで整理できます。製作について相談する際は、関連要件をファイルに添えてPCB実装チームへお送りください。

よくあるご質問#

Dkが低ければ挿入損失も小さくなりますか?

必ずしもそうではありません。DkとDfは異なる材料特性です。誘電損失、導体の振る舞い、チャネル全体の形状を合わせて評価してください。

インピーダンス管理で挿入損失をなくせますか?

いいえ。インピーダンス管理は反射の抑制に役立ちますが、整合した実際の配線にもエネルギーの散逸による損失があります。

S21が負の値なのは測定エラーですか?

必ずしもエラーではありません。損失のある受動経路では、対数表示の伝送値が負になるのは正常です。S21のdB値なのか、正の挿入損失値なのかを確認してください。

すべてのPCBに同じ損失上限を使えますか?

インターフェース、経路長、両端の位置、適合性評価条件が一致する場合に限ります。クーポンの結果をそのまま流用せず、実際の製品に対して合否基準を定めてください。

技術資料:Rogersによる回路材料と高周波損失の解説、Keysightのネットワークアナライザー測定パラメーター、KeysightによるS21対数伝送測定のガイド。