基板厚は、プリント基板の設計・製造において、性能、耐久性、部品との適合性を左右する重要な寸法です。厚みに影響する要因を理解し、用途に適した値を選ぶことが、電子機器の設計を成功させるうえで欠かせません。
この記事では、一般的な板厚から設計時の検討事項まで、PCBの厚みを体系的に解説します。
一般的なPCBの板厚#
最も広く使われるPCBの板厚は1.6 mmです。約0.063インチに相当し、従来は62 milとも呼ばれてきました。1。この寸法は、基板製造の初期に1/16インチのベークライト板が広く使われたことに由来します。現在も1.6 mmは代表的な板厚ですが、次の寸法も利用されています。
- 0.8 mm(31 mil)
- 1.0 mm(39 mil)
- 1.6 mm(63 mil)
- 2.36 mm(93 mil)
- 3.17 mm(125 mil)
これらは公称値です。実際の完成板厚には、製造公差や工程条件によるばらつきがあります。
PCBの厚みを決める要因#
基板全体の厚みには、設計と製造に関する複数の要素が関係します。
1. 層数#
銅箔層や絶縁層が増えれば、その分を積層構成に収める必要があります。ただし、層数だけで完成板厚が決まるわけではありません。適切な材料と製造工程を選べば、異なる層数でも同じ公称板厚にできます。例えば、次のような構成があります。
- 片面基板にも複数の板厚があり、広く使われる1.6 mmも選択肢の一つです。
- 多層基板も1.6 mmにできます。一方、積層構成や用途によっては数mmの厚さが必要です。
2. 銅箔重量#
銅箔重量はoz/ft²で表され、導体の厚みに関係します。一般的には1~2 ozの銅箔が使われ、大電流用途ではさらに厚い銅箔も選ばれます。銅の厚みが増すと、基板全体の厚みにも影響します。
3. コアとプリプレグ#
硬質の基材であるコアと、層間を接着するプリプレグは、板厚の大きな部分を占めます。標準的な1.6 mm厚の2層基板では、コアが約1.5 mmを占める構成があります。
4. ソルダーレジストとシルク印刷#
ソルダーレジストやシルク印刷は薄い層ですが、測定位置の表面高さに加わります。ソルダーレジストの厚みは、代表的な目安として片面約0.01 mmです。
5. 表面処理#
HASL、ENIG、置換銀などの表面処理も、完成基板の表面寸法にわずかな差を生じさせます。
PCBの板厚公差#
±10%程度の公差はよく使われますが、基板メーカーが何を基準厚としているか、めっき・表面処理・コーティングを含むかを確認してください。合意した1.6 mmの厚みに±10%を適用するなら、許容範囲は1.44~1.76 mmです。公称値だけでは、その範囲を受入基準にできません。
適切な板厚の選び方#
用途に適した板厚を選ぶ際は、次の条件を検討します。
1. 機械的な要件#
材料と形状が同程度なら、厚い基板ほど一般に曲げ剛性が高くなります。ただし、振動や機械荷重は実装状態全体で確認してください。薄いリジッド基板は省スペースに役立ちますが、屈曲させる設計には適切なフレキシブル材料と曲げ構造が必要です。
2. 熱設計#
板厚だけで放熱性能は決まりません。銅箔面積、サーマルビア、材料の熱伝導率、ヒートシンクや周囲の空気への熱経路が重要です。熱伝導率の低い積層材を通る経路が長くなると、熱抵抗が増えることもあります。1。
3. 電気的な性能#
インピーダンスは、配線形状、基準プレーンまでの距離、その部分の積層材の誘電特性で決まります。基板全体の厚みだけでは、インピーダンスや信号品質を予測できません。関係する絶縁層の厚みと製造公差を取り決めてください。
4. 部品との適合性#
カードエッジコネクタや特定の取付金具など、所定の板厚を必要とする部品があります。
5. コスト#
標準外の板厚や非常に厚い基板では、特殊な材料や工程が必要になり、製造コストが上がる場合があります。
多層基板の板厚設計#
多層基板では、板厚に関する検討がより複雑になります。特に次の点を考慮します。
1. 積層構成#
銅箔、コア、プリプレグの配置は、全体の厚みと電気的な性能の両方に影響します。
2. インピーダンス管理#
各層のインピーダンスを狙いどおりに保つには、絶縁層の厚みと銅箔厚を慎重に検討する必要があります。
3. ビアのアスペクト比#
基板が厚くなるほど、ビアの深さと径の比であるアスペクト比が重要になります。比率が高いと製造が難しくなり、信頼性上の課題も生じます。
製造時の検討事項#
板厚に明確な要求がある場合は、次の製造条件も確認してください。
1. 材料の入手性#
標準的な厚さの材料は調達しやすく、コスト面でも有利です。5。
2. プレス工程#
特に多層基板では、積層プレス工程が最終的な厚みに影響します。
3. 銅めっき#
スルーホールやビアのめっきでは銅が追加されます。その厚みを含め、設計全体で考慮する必要があります。3。
4. 表面処理#
表面処理によって追加される厚みが異なるため、完成寸法への影響を確認します。
板厚の測定と品質管理#
基板メーカーは一般に複数の位置で厚みを測定し、ばらつきを確認します。代表的な測定位置は次のとおりです。
- 基板の隅付近
- 基板の中央
- 大きな銅箔プレーンや高密度な部品配置領域の近く
サンプルの断面観察では、各層やめっきの厚みを確認できます。超音波やX線などの手法も、適した条件で特定の内部欠陥を調べるために使われます。確認したい対象を識別できる方法を選んでください。
基板厚に関する技術動向#
電子機器の進化に伴い、基板の厚みに関しても次のような動きがあります。
1. 超薄型基板#
材料や製造技術の進歩により、フレキシブル電子機器やウェアラブル機器向けに、0.2 mm未満の非常に薄い基板も製造されています。8。
2. 高密度相互接続(HDI)基板#
HDI技術は、多層化や複雑な配線に対応しながら、薄型の基板構成を実現する選択肢になります。
3. 部品内蔵基板#
部品を内蔵すれば、実装後の高さや表面の占有面積を減らせる場合があります。ただし、基板の積層厚は増えることもあります。基板そのものが薄くなると決めつけず、完成品全体を評価してください。
まとめ#
基板厚は、性能、製造性、コストなど、設計のさまざまな側面に関わる重要な寸法です。1.6 mmのような標準厚は現在も広く使われていますが、用途に応じて多くの選択肢があります。
板厚を左右する要因を把握し、基板メーカーと早い段階から相談することで、性能と作りやすさを両立した設計に近づけられます。
よくある質問#
Q:PCBの板厚は自由に指定できますか?
A:特注厚に対応するメーカーは多いものの、可能なら標準値を選ぶ方が合理的です。特注厚は費用や納期が増える場合があります。標準外の厚みに対応できるか、製造先に必ず確認してください。
Q:板厚は信号品質にどう影響しますか?
A:信号品質は、配線部分の積層構成、基準プレーンとの間隔、配線形状、誘電特性、リターン経路に左右されます。配線とプレーンの距離が大きい場合、同じインピーダンスを得るには配線幅を広げる必要があることもあります。基板全体の厚みだけでは、配線密度やクロストークは判断できません。
Q:業界によって板厚に関する規制はありますか?
A:航空宇宙や医療機器などでは、安全性や信頼性に関わる仕様・規格の中で板厚の要件が定められる場合があります。その用途に適用される業界規格や法規を確認してください。
Q:部品配置では板厚のばらつきをどう考慮すればよいですか?
A:特に寸法公差の厳しい実装品では、メーカーの板厚公差を設計に反映します。ばらつきを吸収するため、部品配置や取付構造の調整が必要になる場合があります。基板メーカーと実装委託先に相談し、現実的な公差で成立する設計にしてください。
2026年版の確認事項#
本ガイドは2026年に技術説明と製造上の確認事項を見直しました。掲載寸法や工程範囲は、製造先の最新能力と製品の合否基準に結び付いている場合を除き、計画時の参考として扱ってください。
量産前に、基板厚に関する重要要件を管理された設計データに明記し、基板メーカーとレビューしてください。完成した実装品は、実際の電気・熱・機械・環境条件で検証します。